生活習慣病と動脈硬化その1

脂質異常症と動脈硬化

3回シリーズとして「生活習慣病と動脈硬化」を取り上げます。今回はその第1回、脂質異常症と動脈硬化です。

生活習慣病を放っておくと、心筋梗塞や脳梗塞になる!?

生活習慣病はその名の通り、ふだんの生活習慣が、その発症や進行に深く関わっている病気で、脂質異常症・高血圧・糖尿病・肥満が代表的なものです。これらはサイレントキラー(静かなる暗殺者)と呼ばれています。その理由は、自覚症状がほとんどないまま、体の中で動脈硬化を静かに進行するからです。そのまま病気に気づかずに、また気づいても「自分は大丈夫」と治療をせずに放っておくと、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞などが起こり、取り返しのつかないことになりかねません。

生活習慣病

動脈硬化とは、血管壁にコレステロールなどがたまり、動脈が硬くなり弾力性を失ってしまうことで、血液の流れが悪くなります。

動脈硬化

さらに進行すると、血管壁が傷ついた時などにできる血栓(血液の塊)が詰まって、血管を完全に塞いでしまい、脳梗塞や心筋梗塞に代表される血栓症の原因になります。

心筋梗塞・脳梗塞

脂質異常症は動脈硬化の大きな危険因子

健康診断などでの血液検査の結果が、以下の判断基準値より一つでも外れると脂質異常症です。
自覚症状はありませんが、動脈硬化の大きな危険因子になります。

脂質異常の数値

コレステロールや中性脂肪の本来の働き

コレステロールや中性脂肪は脂質の一種です。これらは悪者にされがちですが、実はとても重要な役割を担っています。

コレステロールは体中の細胞の膜の原料です。

コレステロールが少ないと血管などの細胞が弱くなり、脳出血などが起こりやすくなります。ほかにも、ホルモンや脂肪の消化吸収を助ける胆汁の原料としても使われています。

コレステロールは水に溶け難い為、血液中ではタンパク質と結合することで血液に溶け込んでいます。そのタンパク質の違いにより、LDL(悪玉)コレステロールやHDL(善玉)コレステロールなどと呼ばれます。

LDLコレステロールは、コレステロールを肝臓から全身へ運ぶ役割を担っています。HDLコレステロールは、不要となったコレステロールを回収して肝臓へ運びます。

両者のバランスが崩れてLDLコレステロールが増えると動脈硬化が促進されます。

不足すると大変
LDLコレステロールの働き

中性脂肪は体のエネルギー源として重要です。

運動するとき最初にエネルギーとして使われるのは糖質ですが、糖質が不足すると中性脂肪が使われます。

エネルギーとして使われなかった中性脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪としてストックされます。

中性脂肪は体のエネルギー源

LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールおよび中性脂肪の動脈硬化への作用

LDLコレステロールが血液中に増え過ぎると、血管内に入り込み活性酸素の働きで酸化されて血管内に溜まり、動脈硬化が促進されます。

悪玉LDLコレステロール

LDLコレステロールは、血管内にたまったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ作用を持ちます。このため、LDLコレステロールが減ると動脈硬化が促進されやすくなります。

善玉LDLコレステロール

中性脂肪は、直接動脈硬化を促進することがありません。しかし、LDLコレステロールを小さくする作用を持ちます。LDLコレステロールが小さくなると、血管の隙間に入りやすくなり動脈硬化を促進する作用が強くなります。また、HDLコレステロールの数を減らす作用も持ち、中性脂肪が血液中で増えると動脈硬化を促進します。

中性脂肪の高い方は、50歳以上で3割を超える!

厚生労働省の平成22年度国民栄養調査によると、脂質異常症が疑われる者の割合は、男性22.3%、女性17.7%というデータが出ています。中でも中性脂肪の高い方は、50歳以上では30%を超えることが分っています。

グラフ 脂質異常症

脂質異常症対策は「食生活の改善」と「運動」が最も重要!

原因になっている生活習慣を改善することが必要です。中でも食事の改善や運動が重要です。

脂質異常症対策のための食生活の改善

  1. 偏らず「栄養バランスのよい食事」を心がける。
  2. 摂取総エネルギー量を抑えて、適正な体重を保つ。
  3. 飽和脂肪酸(獣肉類の脂肪等)1に対して不飽和脂肪酸(植物性脂肪や魚の脂等)を1.5~2の割合でとる。
  4. ビタミンやミネラル、食物繊維もしっかりとる。
  5. 高コレステロールの人は、コレステロールを多く含む食品(動物性脂肪、具体的には肉の脂身や霜降り肉、バター、生クリームやアイスクリームなど)を控える。
  6. 中性脂肪が高い人は、炭水化物とアルコール(お酒)を減らす。

脂質異常症対策のための運動

毎日30~60分間、あるいは、1週間で合計180分以上、「ややきつい」と感じる運動を行いましょう。

中性脂肪を減らすには、炭水化物を減らしましょう!

脂質異常症と指摘されると、脂肪の摂取を減らそうと努力する人が多いですが、中性脂肪が高い人の場合はそれだけでは正解ではありません。中性脂肪を上げる一番の犯人は精製された炭水化物やアルコールです。

  1. 炭水化物を摂取すると、消化されてグルコース(ブドウ糖)になり、体のエネルギー源となりますが、過剰に摂取した場合、エネルギーとして利用されずに余ったグルコースは、体内で中性脂肪に変わります。
  2. アルコールは分解される際に、体内で中性脂肪が作られるのを促進する酵素を作ります。
中性脂肪を上げる食べ物、下げる食べ物

特に白米や小麦粉、砂糖等の精製された炭水化物から作られた、白パン、白米、麺類、ケーキ等のスイーツ、清涼飲料、炭酸飲料の過剰摂取は要注意です。これらの炭水化物を減らし、中性脂肪を下げる魚・野菜・きのこなどを積極的に摂取しましょう。

1日1万歩を目標に歩きましょう!

運動することで、中性脂肪値が下がり、中性脂肪値が下がることで、HDL(善玉)コレステロール値が上がります。
特にお勧めなのは、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動です。酸素が血液中に多く取り込まれることで、より多くの脂肪と結合し燃焼させることが可能だからです。
厚生労働省が健康21で定めた健康つくり運動における1日の目標歩数は、男性9,200歩、女性8,300歩となっています。
生活習慣病の予防・改善をする為に1日1万歩を目標に歩きましょう。

グラフ ウォーキング効果(男性の場合)
生活習慣病の予防・改善 目標1日1万歩
2014年03月29日
TOP