歯みがきで全身の健康を守ろう!②
毎日使うものだからこそ高機能な歯みがき剤を使いましょう
今回のテーマは、歯みがきについて。前回の健康情報では、歯の健康の大切さに加え、歯を失う原因についてお伝えしました。
今回の健康情報は、歯の健康対策と最新の歯みがき剤、正しい歯のみがき方についてご紹介いたします。
歯周病や虫歯を予防するにはどうしたらいい?
私たちの口には、歯周病や虫歯から歯を守る仕組みが元々備わっています。その仕組みが前回のQ&Aでも紹介した「唾液」の分泌です。唾液は、歯の健康に関わる多くの作用を持っています。
唾液の歯の健康に関わる作用
- 自浄作用
- 食べかすなどを洗い流す
- 抗菌作用
- 菌を殺して歯垢(プラーク)の発生を抑える
- 再石灰化作用
- 歯の成分を再沈着し、溶けた歯を再生する
- 希釈作用
- 歯の表面の酸を薄める
- 緩衝作用
- pHを元の状態に保とうとする
歯が汚れにくく唾液の分泌量の多い原始時代は、唾液だけで歯の健康を守ることが可能でした。しかし、柔らかい食べ物を食べて噛む回数の少ない現代は、唾液だけで歯の健康を守ることは出来ません。
虫歯や歯周病を予防して歯の健康を守るには、歯みがきが必須です。毎日、しっかりと歯みがきをして歯の健康を守りましょう。
1本2,000円以上!?高機能歯みがき剤が登場
歯みがきに必要なものといえば、歯ブラシと歯みがき剤です。皆さまはどのような歯ブラシや歯みがき剤をお使いでしょうか?歯ブラシは、音波歯ブラシなど電動の非常に高価なものが登場しています。
歯みがき剤も同様に高価な製品が登場しているのをご存じでしょうか?
市場を見てみると、2~3千円台の歯みがき剤が数多く販売されて使われています。なぜ、このように高価な歯みがき剤が使われているのでしょうか?
高価な歯みがき剤が使われる2つの理由
主に以下の2つの理由で、より良い歯みがき剤を使いたいと高価格帯の製品を求める方が増えたためと考えられます。
オーラルケア意識の高まり
前回の健康情報でお伝えした内容、全身の健康維持や健康寿命を延ばすために歯の健康維持が必要であることなどが、8020運動などで広く知られるようになり、オーラルケア意識が高まっている。
口臭や白い歯を気にする消費者ニーズに沿った高機能な製品の発売
消費者ニーズに沿った口臭予防や美白作用など、様々な機能を持つ素材が歯みがき剤につかわれるようになり、歯みがき剤の高機能化が進んでいる。
最新の歯みがき剤の機能がすごい!
歯みがき剤は、歯をみがくために塩を使ったのが始まりです。塩は、研磨作用と収れん(歯茎を引き締める)作用を持っています。
最新の高価格帯の歯みがき剤は、前記2つの機能に加え非常に多くの機能を持つようになりました。その機能(作用)と関連する成分が以下になります。
最新の歯みがき剤が持つ主な作用
- 研磨作用
- 炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、ハイドロキシアパタイトなど
- 再石灰化促進作用
- プロテタイト、キシリトール、フッ素など
- 殺菌作用
- プロポリス、イソプロピルメチルフェノールなど
- 美白作用
- メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなど
- 汚れの再付着防止作用
- メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなど
- 歯石予防
- メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなど
- 油性の汚れの洗浄性向上作用
- 界面活性剤など
- 唾液の分泌促進
- キシリトールなど
- ミュータンス菌(虫歯菌)の代謝阻害
- キシリトール
- 抗炎症作用
- プロポリス、グリチルリチン酸ジカリウムなど
- 収れん(歯茎を引き締める)作用
- 塩化ナトリウム、オウバクエキスなど
- 止血作用
- トラネキサム酸など
- 血行促進作用
- ビタミンEなど
- 歯垢の分解
- デキストラナーゼなど
また、以下のような特徴を持つものが多くなっています。
- 低発泡性
- 泡立ちが少なく、歯に当たる歯ブラシが良く見える
- 低研磨性若しくは研磨剤無し
- 研磨剤による歯の摩耗防止
- ゲルタイプ
- 口の中で成分が広がりやすい
このように様々な機能を持ち、歯の汚れを落とすだけでなく、歯の美白や虫歯・歯周病の予防など、口中の健康維持に非常に役立つものとなっています。
Q&Aで知る、正しい歯のみがき方
以下の内容が正しいと思えば〇、間違っていると思えば×でお答えください。
回答は以下になります。
正解は、「×」。
酸性の食品を食べた後の口の中は、酸性になっています。唾液で徐々に中性に戻っていき、ほぼ30分後に安定します。
食後すぐ、酸性の状態で歯をみがくと歯を傷つけてしまう危険性があります。食後に歯をみがく場合は、30分以上経ってからにしましょう。
酸性の食品を食べなかった場合はどうか?この場合の歯みがきのタイミングについては、専門家によっても「すぐみがく派」と「30分以上経ってから派」に意見がわかれています。
それぞれの言い分は、虫歯予防にはすぐに汚れを取った方が良い、歯を傷つけないために中性になってからが良い、というもの。(酸性の食品を摂らなくても、口の中の菌の働きで食後は口の中のpHが下がり、酸性に傾きます。)
それぞれのリスクを考えた場合、歯みがきを食後30分以降に行っても虫歯になるリスクはほとんど変わらないと考えられ、30分以上経ってから行うのが無難なように思います。
正解は、「×」。
就寝中の唾液の分泌は1日の間で最も少なく、起床時は睡眠中に増加した細菌のために口腔内の細菌数や細菌の産生した毒素が最も多くなっています。このため、朝起きたらすぐに歯みがきをして口の中にたまった細菌や毒素を流しましょう。
起きてすぐの唾液1mLに含まれる細菌数は、便1gの10倍との報告があります。時間が無い場合は、口をゆすぐだけでも行いましょう。
正解は、「×」。
A2で朝の口の中の細菌数は非常に多いとご紹介しました。その理由は睡眠中に唾液の分泌量が減るため、起きている時に比べ細菌が繁殖し易いからです。睡眠中は歯の防御力が落ちていると言えます。
そのため、睡眠前(晩)にしっかりみがいて歯の汚れや菌を落とすことが最も大事であるとされています。
正解は、「×」。
歯ブラシを濡らしてから歯みがき剤をつけてみがくと、素早く泡立って短時間で『みがいた気』になり、汚れや細菌が落ちていない場合があります。
歯ブラシは、水で濡らさずに使いましょう。
正解は、「〇」。
初期の虫歯を予防し、進行を抑えるのに有効なため、歯みがき剤には再石灰化を促す成分(フッ素など)が入ったものが販売されています。
歯みがき後に何度もうがいをすると、有用な成分が残らないので、うがいは1〜2回にとどめるべきと指導している歯科医師もいます。
正解は、「〇」。
再石灰化による歯の修復は、食後に口の中のpHが酸性から中性に戻ってから行われます。間食が多いと、歯の修復が行われる中性の状態を維持する時間が短くなり、その分、歯が溶ける酸性の時間が長くなります。
このため、間食が少ないほうが歯の健康に良いと言えます。
正解は、「〇」。
虫歯を予防するには、歯の面に直角に歯ブラシを当てて小刻みに振動する。一方、歯周病を予防するには、歯と歯肉の境に歯ブラシを45°になるように当てて、細かく振動する。
高齢者は、虫歯と歯周病の両方のリスクを抱える方が多く、両方のみがき方を行って歯の健康を守りましょう。
正解は、「〇」。
歯ブラシによる歯みがきでは、歯の間にブラシが入らず、歯間の歯垢を6割程度しか落とせません。デンタルフロスや歯間ブラシなども使うことで9割近くの歯垢を落とすことが可能です。
歯ブラシに加え、デンタルフロスや歯間ブラシも使って歯をみがきましょう。